自分の故郷が大切な人にこそ読んでもらいたい「なおえつ うみまちアート」批判① ~上越市役所 企画政策課への取材~

「なおえつ うみまちアート」批判(前編)~上越市役所 企画政策課への取材~ うみまちアート批判

はじめに

2021年7月5日付け上越タウンジャーナルの記事
作家の手作りシャツ姿で直江津彩る 「なおえつ うみまちアート」展示写真を撮影

この記事Facebookコメント欄に以下のようにコメントをした。

今井 孝
地元上越にだってカメラマンもアーティストもいるだろうに、結局外から著名なアーティスト(笑)を呼んでやった気になっているだけ。上越市民でも直江津だけで盛り上がってるのでは?
本当にそれでいいの?

このコメントが起点になっていると自負するが、一部の市民の中にこのイベントに対する議論が起こりつつある。そこで改めて私がこの短いコメントで本当に伝えたかったことを書いてみようと思う。

それは地方都市に対する危機感そのものだ。
ぜひ新潟県上越市だけでなく、自分の故郷を大切にする人に読んでもらいたい。

全体が長くなるため、市役所への取材と私の意見とで二部構成とする。
あと大事なことだが「批判」は「悪口」や「誹謗」とは全く意味が異なる。このことをぜひご理解いただきたい。

市役所への取材

本題に入る前に、「なおえつ うみまちアート」と今回のキーワードとなる「包括連携協定」について、2021年7月13日に上越市役所企画政策課を訪問し話を聞いてきたのでその報告をする。

そもそもの発端は、直江津のイトーヨーカドーが撤退したことからはじまる。

オープン以来地方の生活を支えてきたヨーカドーの撤退は、その都度日本中でニュースになるほどの衝撃を地元に与えているのは承知のとおりだ。

その空白を埋めるため頸城自動車(株式会社マルケーエスシー開発)は並々ならぬ誘致の努力をしたのだろう。村山秀幸上越市長が良品計画に対して直接お願いする文書をしたためたという噂すら聞く。それほど直江津の存亡をかけたものだったのだろうと想像する。

結果、良品計画の入店が決まり、昨年7月にオープンした。

それに先立つ2020年1月27日に締結されたのが、上越市、頸城自動車と、良品計画による包括連携協定である。

良品計画、頸城自動車のプレスリリース

上越市・良品計画・頸城自動車の三者による「地域活性化に向けた包括連携に関する協定」締結のお知らせ | ニュースリリース | 株式会社良品計画
株式会社良品計画のニュースリリースは、こちらからご覧いただけます。
包括連携協定締結・期間限定ストアのお知らせ|頸城自動車株式会社(公式ホームページ)
頸城自動車株式会社の包括連携協定締結・期間限定ストアのお知らせです

この包括連携協定は以下の内容となっている。

  1. 上越市及び直江津地域の活性化に関すること
  2. 公共交通の利便性向上、利用促進に関すること
  3. 施設・空間の有効活用に関すること
  4. 地域資源を活用した産業振興に関すること
  5. 子育てや次世代育成支援に関すること
  6. 地域や暮らしの安全・安心に関すること
  7. 高齢者支援に関すること
  8. 障がい者支援に関すること
  9. 環境対策に関すること
  10. 災害対策に関すること

広範囲で漠然とした内容だが、一般的に包括連携協定とはどの自治体、企業もこのようにざっくりしたものになっている。ここではとりあえず「まちづくりに関した協定がある」と思っていただければよいだろう。

上越市への質問とその応え

「うみまちアート批判」を書くにあたり、知らないことを知らないまま書くわけにいかないので、一市民なりに市役所に取材をした。もうちょっと深く斬り込めたと反省する点もあるが、以下一問一答的に記述する。

Q 良品計画との包括連携協定はどちらから話が持ちかけられたのか?

A 今回に限らず民間からであることが多い。
もちろんヨーカドー跡への出店が前提になっている。
そもそも、それ以前にも包括連携協定自体は2017年に上越市、直江津ショッピングセンターを運営する頸城自動車、イトーヨーカ堂、セブンイレブンジャパンの間で締結されていた。

Q うみまちアート予算 7000(6800)万円の予算根拠は?

A 今回6800万円の予算をつけた。
うち国(以下政府と記す)からの補助金が3400万円、市からが3400万円。
市の支出3400万円はそれをなるべく減らすためにふるさと納税を活用し、そちらの分を増やしたい。
なおこの企業版ふるさと納税は市内の企業は適用されない。
良品計画がふるさと納税を使用するという話については金額は言えず、まだ話も途中であるが、そのようになるであろう。
ここからさらに地元が協賛金などを募って、全体として7000万円を目標としている。
このことは議会でも丁寧に説明してきた。

Q なぜ現代アートフェスになったのか

A この三者の定例会議の中で、コロナ禍における上越市をにぎやかにしようという話があった。
良品計画出店には地域と連携したまちづくりが含まれている。
直江津にうみがたりができ、レールパークができてきた中で何かできないか、イベントなのか、という話の中で、ちょうど今年開催の「大地の芸術祭」(7月14日に開催延期が決定)に合わせれば相互の行き来もできるのではないかということになった。
また、現代アートとは上越市においては新しい切り口であると考えた。

Q キュレーター、参加アーティストの人選は

A 良品計画は現代アート関連イベントをずっとやってきて、その流れで良品計画から提案された。
参加アーティストの人選は、それをするのがキュレーターの役割だ。
(キュレーターとは、ここでは展覧会などの企画やアーティストの人選をするプロデューサーと考えればよいだろう)

Q 実行委員会について

A 実行委員会のメンバーについてはこのとおりだ(資料からリストを拝見した。協定三者以外に、直江津の商工各団体から代表者が参加している)。
実行委員会の会議は一般非公開で、マスコミには入っていただいている。
議事録は作成しているが、市民がすぐ読めるようにはなっていない。
7月12日、直江津学びの交流館で開催していたのは、「直江津の住民向けの説明会」だった。

Q 包括連携協定について
一般論としてこの「包括連携協定」について。
そもそも包括連携協定とは、そもそも制度化、法制化されているのか?
総務省から指針などが出たりしているものなのか?

A たしかに言われてみれば法制的な根拠、裏付けについては私もわからない。
調べてみたい。

Q 包括連携協定が言う「地域課題の解決」について、企業がどのような解決の役割を担うことを期待しているのか。

A 良品計画にしても、ただ商売をするのではなく、まちづくりの観点から上越市に来た。
もちろん企業としてはイメージアップ、CSR(企業の社会的責任)といった点で、長い目で見た効果を期待しているだろう。いきなり儲かるものでもない。
たとえば移動販売バスを運行しているが、あのバス事業は完全に良品計画の持ち出しである。

補足

・この日の取材で予算6800万円が何にどのように使われるかまで確認しなかったのは詰めが甘い。
・予算が上越市と政府から出ているうえに市の担当部署が動いているためいかにも「役所の仕事」の姿をしているが、その見方は本質を見誤るかもしれない点を補足しておく。


ここまでいかがだっただろうか。
次回では私の主張を述べる。ぜひそちらもお読みいただけたらと思う。
(つづく)

2021.7.25追記
全体の構成を変更し、タイトルにナンバリングしました。

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